新レンズ FE 50mm F1.2 GM 開発者インタビュー 掲載「“本当の意味で使いやすい” F1.2を目指して」
FE 50mm F1.2 GM 開発者インタビュー
4月23日に発売される標準単焦点レンズ FE50mm F1.2GM「 SEL50F12GM 」の開発者インタビューが、α Universeに掲載。
FE 50mm F1.2 GM 開発者インタビュー
こんにちは、よしおくんです。
ソニー初の開放F値1.2のレンズが発売となります。
その開発コンセプトは “本当の意味で使いやすい”F1.2を目指して。
αユーザーから、より明るい大口径レンズへの期待を世界中からいただい中で多かったのが、50mm“標準”のF1.2 G Masterを求める声。
FE 50mm F1.2 GMを開発する上で、このレンズで追求したのはG Masterの解像とぼけを高いレベルで達成しつつ、お客様が“本当の意味で使いやすい”レンズにすること。
開発コンセプトを達成するために、どのような技術が投入されているの解説を見ていきたいと思います。
〈α Universe〉
まずは、開放F値1.2のレンズを開発する難しさから話が始まります。
開発者
αレンズラインナップには、既にPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAがあります。
今回のFE 50mm F1.2 GMと比べ、開放絞り値はそれぞれF1.4とF1.2で、値そのものの差は小さいように見えますが、そこには1/2段もの違いがあります。
F1.2の実現には、より多くの光を取り込むために有効口径でいうと17%、つまり面積で40%近く大きくする必要があり、コンパクトなF1.2の実現には、設計、製造いずれの面でも高いハードルがありました。この課題の克服のため、多くの新たなチャレンジをしています。
よしおくん
ふむふむ、F1.2 は大口径化でレンズは巨大化し、AF駆動速度の低下を招くことがわかりました。
コンパクトな筐体にしなければ、“本当の意味で使いやすい”にはならないですね。
開発者
そのひとつに、F1.2ながら前玉が肥大化しないよう、ソニー独自の超高度非球面XA(extreme aspherical)レンズを複数枚採用しています。
これにより口径を大きくすることなく、大口径レンズで発生しやすい諸収差の徹底的な補正に成功しています。
また、フォーカス群で発生する収差を徹底的に排除する為、完全独立駆動のフローティングフォーカスを採用し、至近を含むあらゆる被写体距離において、それぞれに応じた最適な収差補正を実現しました。
開発者
フォーカス駆動には、高推力で静粛性の高いソニー独自のXD(extreme dynamic)リニアモーターを採用しています。
このコンパクトな直動アクチュエーター、そしてその高精度な制御で、フォーカス群に適切な収差補正の役割を有するレンズを複数枚配置できる設計が可能となっています。
結果、G Masterとして最高レベルの解像とぼけの実現はもちろん、カメラの高速、高精度、高追随なAF性能を最大限引き出すレンズを、長さ108mm・質量約778gと、前述のPlanar(長さ108mm・質量約778 g)と同等のサイズで実現することができました。
プロ、ハイアマなど、多くの方に使っていただける、これまでにないF1.2レンズとなっていると自負しています。
よしおくん
まずは、“本当の意味で使いやすい”を実現するために採用された技術の解説ですね。
光学設計のこだわり開放F値1.2から圧倒的な解像性能を実現
開発者
昔から50mmレンズで多用されてきたのは、ガウスタイプのレンズ構成です。
ガウスタイプは、絞りを挟んでエレメントを対称に配置することで、絞りの前後で収差を打ち消し合うことができ、特にこの50mmという画角と相性が良いために、歴史的に多くの50mmレンズがこの形で生まれています。
ただし、このタイプで打ち消し合うことができるのは、歪曲や像面湾曲といった収差のみで、軸上光束やサジタル方向の光束は補正できません。
つまり、この光学配置では、今回のレンズで我々が目指した高い収差補正性能の目標をクリアできないのです。
ご承知の通り、これらの収差補正が充分ではないと、画面全域での解像性能の実現が出来ず、点として写るべきところが、鳥が羽ばたいているように見えてしまったり、色にじみが出てしまったりしてしまいます。
それでは、せっかくの大口径レンズを絞って使わなければならないことになり、お客様に大口径の良さを味わって頂くことができません。
開放F値から安心して使って頂ける光学性能を実現する為に、このレンズでは、敢えて対称形を一部崩す光学配置に挑戦し、対称形のレンズ構成では補正が難しい諸収差を徹底的に抑制しています。
よしおくん
お~。“本当の意味で使いやすい”コンパクトな筐体にするために、光学配置から見直すチャレンジをされていたんですね!
開発者
前述しました対称形タイプでは、軸上光束やサジタル方向の光束の補正を行うためには、通常は前玉側のエレメントを大きく、枚数も増やすことになりがちです。
計3枚もの超高度非球面レンズ(XAレンズ)を採用した今回の新しい光学配置で、 前玉径の肥大化を避け、レンズの枚数も最小限に抑えながらレンズ全体のサイズの小型化も実現しました。
必要最小限の枚数で構成しつつ、圧倒的な収差補正性能を達成しています。
開発者
XAレンズは、“非”球面という文字通り、レンズ面の曲率が一定ではなく、周辺部にいくにつれ曲率を変化させたエレメントです。
このレンズに使われているXAレンズ3枚は、ソニー独自の光学シミュレーション技術を用いながら、検討を重ねそれぞれ最適な形状に設計されています。
ご承知の通り、G Masterで採用しているXAレンズは、サブミクロン単位で面精度を管理しています。
今回はF1.2の大口径ということで、外径の大きなエレメントになっており、その大きさの中で高い面精度を実現するために、製造工程におけるレンズ加工の各プロセスに求められる要求精度が飛躍的に上がっています。
これまで以上に難易度の高い製造でしたが、設計・製造の連携による、加工プロセスの改善と同時に、新たな技術的挑戦により、大口径化と高い面精度の両立を実現しています。
特にレンズ構成図の前から2枚目の位置にある大きなXAレンズは、前玉側の構成枚数の削減、小型軽量化に大きく貢献しています。
この位置に、ソニーにしか作ることのできない超高精度の大口径の非球面レンズが使えることは、コンパクトなF1.2レンズを生み出す光学設計において、非常に大きいメリットです。
ソニー独自の色収差シミュレーションによる硝材の組み合わせの最適化、それによる色収差、色にじみ低減を徹底的に行っており、大口径ながら、これまでのG Masterで最高レベルの理想的な高解像、高コントラストを実現しています。
よしおくん
大口径レンズはより多くの光を捕捉する点から、抑えるのが難しい球面収差や、色収差などが発生しやすくなる点にチャレンジされて、G Masterの理想とする高解像度を達成させたのですね。
被写体深度が浅いなかで、高解像度を達成するのは相当大変だったと思いました。
F1.2の豊かなぼけ × G Masterのとろけるようなぼけ
よしおくん
G Master と言えば、大きなぼけだけではなく、とろけるようなぼけですよね~
開発者の方の自信のある言葉「F1.2を求めるお客様の期待に応えるものを生み出せた」に期待ですね!
開発者
豊かなぼけはF1.2レンズの魅力の1つですが、ぼけ量だけではなく、G Masterに相応しい理想的なぼけ描写にこだわりました。
特にポートレートでは、被写体を際立たせる自然でなめらかなぼけの役割が非常に重要です。
ぼけは非常に官能性や感覚的なものなので管理が難しいのですが、F1.2を求めるお客様の期待に応えるものを生み出せたと思っています。
まず、設計初期段階からのぼけシミュレーションとその修正の繰り返しにより、理想的な球面収差を徹底的に追求することで、ぼけと解像のどちらも妥協することなく両立させています。
さらに製造工程において、個体ごとにエレメント間の間隔調整を行い、球面収差を細かく管理することで、バランスを取るのが難しい前ぼけ後ぼけの両方で、クセの無い美しいぼけ描写を実現しています。
先に解像のところで、XAレンズの製造について触れましたが、サブミクロン単位での面精度管理によって、玉ぼけの中に縞模様が出るいわゆる“輪線ぼけ”の発生も抑えています。
開発者
11枚羽根円形絞りも、柔らかで美しいぼけ描写につながっています。
開放から2段絞ったところでもきれいな円形を保つよう、絞りユニットを新開発しました。F1.2は絞りの口径も大きくなりますから、過去の延長で開発すると当然絞り羽根も大きくなります。
さらに絞り開放時には、その大きな羽根1枚1枚を光路外、つまりは有効径の外側に退避させるスペースが必要になり、結果的にレンズ外径が大きくなってしまうことにもつながります。
絞りユニットを肥大化させない為に、羽根の形状から、それを駆動させる為の駆動部品一つ一つまで、徹底的な小型化設計を行いました。
絞りユニットは絞り値や露光量を決める大変重要な部分で、部品の小型化を行う事で、各部品に求められる加工精度や、部品の組み立て精度の確保が飛躍的に難しくなりますが、今回、加工プロセスと組立プロセスを徹底的に追い込み、高精度と小型化の両立を実現する事が出来ました。
よしおくん
レンズの長さだけではなく、直径をもコンパクトにするために絞りユニットを新規に開発されたんですね!
小型化に不可欠だった直動式アクチュエーター
開発者
高い光学性能をAFと共に実現するためには、メカやソフト制御との連携が欠かせません。
先ほど触れたように、あらゆる被写体距離で高い性能を持つためには、フォーカス群は複数枚で構成する必要があります。また、F1.2という大口径も伴って、必然的にフォーカス群の重量は増大します。
フォーカス群の重量増加は、フォーカススピードや、駆動時の振動・ノイズの増大に繋がるため、大きな課題となります。 AFスピードを損なうことなく、どう解像とぼけを理想に近づけるか。
その解として、既に触れたとおり、このレンズでは、アクチュエーターにソニー独自のXDリニアモーターという直動式モーターを採用しました。
アクチュエーター制御&メカ設計者のこだわりF1.2でも使える高速・高精度なAF
開発者
今回F1.2レンズで高性能AFを実現する上で、課題となったのは、浅い被写界深度で求められる非常に高いピント精度に応えることでした。
開放F値1.2でも狙い通りのAF精度や追随性が発揮できなければ、本当に“使いやすい“レンズとはいえません。
ただ、これが技術的に本当に難しい。
このレンズには、F1.2という浅い被写界深度で高速・高精度なAFを実現するために、様々な技術と工夫が詰め込まれていますが、特に、フローティングフォーカス構造、XDリニアモーター、4基のフォーカス位置センサー、フォーカス群の重心バランスの最適化、の4点が大きく貢献しています。
まず、フローティングフォーカス構造は、光学性能の向上だけでなく、フォーカス群を2つに分けることで、それぞれのフォーカス群を軽量化できるというメリットもあるため、高速・高精度なAF駆動の達成に貢献しています。
その一方で、F1.2での解像性能の実現には、大きく重い2つのフォーカスレンズ群を寸分もずれることなく同期して動かす必要があります。
これを実現したのが小さいながらも高推力を誇るソニー独自のXDリニアモーターです。
またF1.2の浅い被写界深度では、わずかな誤差も許すことができませんので、フォーカスレンズ群を検出するセンサー4基で、常にフォーカスレンズ位置を、センシングしています。最後に、XDリニアの推力を無駄なく効率的に発揮するよう、フォーカス群各々の重心バランスが取りやすいために、群と群の間に固定された光学群を設けるといった工夫も取り入れています。
フォーカス群の重心とモーターの推力点を合わせることができ、無駄なく効率よく力を伝達することで、高速・高精度・静粛なAF駆動の達成に貢献しています。
よしおくん
開発者インタビューの中で「これが技術的に本当に難しい」と書かれています。
開放F値1.2のレンズの中にはAFがサポートされていないレンズもある中で、浅い被写界深度で高速・高精度なAFを実現できると、動画撮影でも使える開放F値1.2のレンズになりますね。
最後に - 新たな撮影体験を届けるF1.2レンズ
開発者
菊地: このレンズは、光学設計者として解像とぼけを納得のいくまで突き詰めた、まさに「G Master」の最高峰レンズといっても過言ではありません。お客様には、F1.2での解像の高さと美しいぼけを存分に堪能していただければと思います。
F1.2なのにコンパクトなサイズに高い性能がバランスよくまとまっており、スペックだけでお伝えできないこともあります。是非一度実物を触っていただきたいです。ソニーのあらゆる技術が詰まったレンズですので、いろいろな撮影シーンでお使いいただけると、レンズ設計者として嬉しい限りです。
水野:プロフェッショナルからハイアマチュアのお客様まで、いろいろな使い方のできる万能レンズです。かつてないF1.2レンズですので、ポートレートやウエディング撮影はもちろん、高いAF性能を生かし、スポーツなどの動体撮影でも狙った被写体を一瞬で捉え追い続けることができます。
高田: コンパクトなこのF1.2レンズは動画撮影でも性能を発揮します。手持ちやジンバル撮影での取り回しもよく、F1.2の浅い被写界深度でも被写体を追い続けるAF性能、AFや絞り駆動の静粛性、滑らかな絞りリングやMF時の応答性の高いフォーカスリングなど、動画撮影に最適なスペックとなっていますので、これまでにない新たな映像表現をお楽しみいただきたいです。
新たな撮影体験を届けられるレンズに仕上げましたので、「G Master」のポテンシャルと新たな価値を感じていただければと思います。
よしおくん
60本目のEマウントレンズとして登場する FE50mm F1.2GM「 SEL50F12GM 」。
多くのチャレンジをされて、開放絞りF1.2 レンズとして写真や動画に新しいレベルの表現をもたらせてくれるレンズになっていますね。
ここまでお話を聞くと、さわりたくなります。
ソニーストア直営店(銀座、札幌、名古屋、大阪、福岡天神)での「SEL50F12GM」先行展示は、3月19日(金)より展示が開始されます。いち早く体感をご希望される方は、お近くの直営店おいての体感がオススメです。
私も体感してきます!
〈ソニーストア〉
ソニーストア及びソニー取扱店舗での予約販売開始は、 2021年3月23日(火)10時から。
ご購入をご検討されている方は、発売日から新商品レンズが楽しめる先行予約をご活用ください。
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